時代のカルテ
4月15日、アメリカで心臓移植を受けるために、1歳の男の子が日本を出発した。
15歳未満の脳死ドナーを日本では認めていないため、海外に渡って心臓などの臓器移植を受ける幼い子供たちが後を絶たない。
他国への長時間にわたる移動には高いリスクが伴い、移植費用は募金活動なしでは用意できないほど高額である。 最近では、自国で15歳未満の脳死ドナーを禁止していながら海外での移植を容認している日本の姿勢に対して、 批判の声が上がり、一部で受け入れを拒否する国もでている。 こうした事態を受けて、国会には臓器移植法の改正案が3つ提出された。
(※3案のうち1案は、より移植の条件を厳しくする法案)
ただし、「脳死は人の死」なのか、という本質的な問題に関して、世論の合意は形成されているとは言い難い。 さらに、わが子が脳死となった時、"まだ心臓が動いている状態で臓器提供の意思を問われる"という厳しい現実を、 どれだけ理解されているのか疑問である。
法改正の議論において、関心の中心が"臓器移植を必要としている子供"に集まるなかで、 私たちは"臓器の提供者となるかもしれない子供"の実状を伝えるべきだと考え、一人の少年と家族を取材した。
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「その時は泣きわめいてしまいました。信じられない、っていうのと、何で急に?何で?何で?っていう…。 なんか治療はないんですか!みたいに担当医に詰め寄りました」
(母・まり代さん)
7歳になってから、みづほ君は脳内部の血流を測定する『スペクト検査』を受けた。 その結果、彼の脳の画像は、全く血液が循環していないことを示す黒い影で覆われていた。 つまり、脳死であることが再確認されたのである。
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日本臓器移植ネットワークは、脳死になると、「多くは数日以内に心臓も停止する」と、現在もホームページに記している。
しかし、大阪医科大の小児科グループが分析した、15歳未満の臨床的脳死121症例のうち、 みづほ君のように30日以上の生存が確認されている子供は、44人(36%)いるという。「11本の歯が生え変わったんですよ、乳歯から。本当に嬉しかったですね」
みづほ君の場合、食事を自ら口を動かして飲み込むことはできない。 そのため、チューブで胃に流し込んで摂取している。 そして、排泄の時、みづほ君は足を震わせる。この動きを見て、母・まり代さんは笑顔になった。
「この動きが、私から見ればコミュニケーション。(自分の気持ちを)教えてくれてる、ってことなんです」
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『子供の場合、脳死判定を行うこと自体が難しい』ことが、日本で15歳未満の脳死ドナーを認めなかった一因となった。 厚生労働省は、6歳以下の脳死判定基準を示しているが、田中英高准教授(大阪医科大・小児科)は疑問を呈する。
「121例の臨床的脳死の子供の報告があるんですけど、3例は自発呼吸が弱いながら、 脳波が戻ったり、脳の血流が戻ったりしてる。脳死判定基準が100パーセント確実なのかっていうと、科学的にはかなり疑問があります」 これに対し、脳死判定に関わってきた、横田裕行教授(日本医科大副院長・救急医学)は、異なる見解を示す。
「血圧、呼吸の変化に十分に注意しながら、子供に変化がある場合には中止する、という姿勢で行うことを前提にすれば、脳死の判定はできます。 海外の判定基準と照らし合わせても、(日本の小児脳死判定は)妥当な基準だと思っています」
『脳死と診断された患者が、以前の生活をできるまでに回復したケースは報告されていない。その現実を受け入れながら、母・まり代さんは、「脳死を一律に人の死」とする、法改正の動きに危機感を抱いている。
「(脳死とは)頭だけやられちゃうわけですよね。でも、そこにいるのは生身で心臓が動いている子供なわけです。 頑張っている子供のお腹切って臓器取り出すなんてことは、親として出来ないですよ。 子供がかわいそう、いやって言えないんだもん、何されても…。」2009年11月、みずほ君は肺炎のために亡くなりました。
謹んで、ご冥福をお祈りします。
(ニュースJAPAN/調査報道班)
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